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2018年10月18日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

「盗撮」「痴漢冤罪」を生む土壌
‐ただの「迷惑」で片づけられるから‐

  これは、とてもじゃないが「迷惑」なんて言葉で片づけられるものではない。そのことを映像が物語ってくれた。先週、各局のテレビニュースが放送したが、JR埼京線・池袋ー新宿間の車内で女性を盗撮した男が通報でかけつけた駅員の隙をみて線路に飛び降りて逃走。一目散に逃げる様子を乗客が撮影。1度は画面から消えた男を今度は西口の防犯カメラが捉えていた。

  20分後、東京都迷惑防止条例違反で逮捕されたが、45歳カラオケ店アルバイトのこの男は15本の線路をまたいで逃げたため、埼京線や山手線が14分停車した。「以前、痴漢をして捕まったので、(体を触らない)盗撮をすることにしてスマホをシャッター音の出ない動画撮影モードにしていた」と、泣きながら供述しているというが、いいかげんにしろ。泣きたいのは被害に遭った女性だし、足止めを食らった何万もの人だろう。

  ある女性誌のアンケートでは、日本の女性の70~80%が通勤通学の電車、帰宅時の道路などでこうした性犯罪の被害に遭っているという。交通事情の違いもあるとはいえ、長年こんなことが続いているのは、先進国では日本だけではないかと指摘している。いずれにしろ、この種の犯罪に対するユルユルでだらしない対応は早晩、改めるべき時期にきているのではないか。

  私はニュース番組で「盗撮逃走男の罪名が都の迷惑防止条例違反、ただ迷惑をかけただけとは、どういうことだッ」と声を荒らげてしまった。この犯行は条例の第5条、「衣服で隠されている下着、身体を撮影する行為」に当たるが、刑罰は懲役1年、罰金100万円以下。だけど悪質な常習者でない限り、これまで盗撮で実刑というのは聞いたことがない。罰金も、たいていは50万円以下だ。

  その一方で、社会問題ともなっている「痴漢冤罪事件」。「どうせ罰金ですむんだから、さっさと認めてしまえ」という安易でずさんな捜査は、こうしたユルユルの刑罰が生み出してはいないか。そのことによって家族も職場も失った男性がどれほどいることか。

  いずれにしろ、こうした犯罪に社会はもっとビシッと対処すべきではないのか。スカートの中のお尻をバシャバシャ撮られて「迷惑かけた」ですまされては、たまったもんじゃないのだ。

(2018年10月16日掲載)

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