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2018年9月 8日 (土)

緊急Webコラム 吉富有治

知事失格!
台風被害がまだ残る大阪を離れ沖縄県知事選に首を突っ込む松井知事 

  猛烈な勢力を持った台風21号は4日昼ごろ、徳島県南部に上陸し、その後は全国各地に大きな傷跡を残して過ぎ去った。

  特に大阪の被害は深刻だった。府内南部では強烈な暴風雨で電柱が根こそぎ倒れ、飛んできた瓦や屋根が電線を切断し、台風翌日の5日午前9時の段階で、関西電力の管内では約218万3000軒で停電が発生した。関西国際空港では高潮の影響で滑走路や空港建物の一部に海水が入り込み、空港機能は完全に停止。タンカーが連絡橋にぶつかったことで、空港内では6日未明まで職員と利用客の約8000人が取り残されていた。

  かつてない規模の台風被害に遭った大阪府では、今も府庁や府内の各自治体の職員が、また大阪府議や府内43市町村の市議、町議らが政党を問わず住民のために必死に走り回っている。

  ところが、行政職員や議員が台風被害の状況把握とトラブル解決に奔走する一方で、なにをやっているのかまったく不明な行政トップがいたから驚いた。大阪府の松井一郎府知事である。

  府議会関係者の話によると、大阪に台風が襲った4日午後から松井知事の動きがまったく見えず、知事が指揮を執る災害対策本部も立ち上がらなかったという。また、いつもは饒舌なツイッターも、なぜか台風の間は沈黙。台風が過ぎ去った後の最初のツイートは、共産党批判と平松邦夫前大阪市長への罵倒という有り様だ。一部の自治体では、停電や断水に関する情報を市長がツイッターでこまめに伝えているのに、大阪府のトップが緊急時に何一つ情報を伝えないのは異常だろう。

  だが、驚くのはこれだけではない。7日午後15時47分に流れた産経新聞ネット版には、松井知事が大阪府内ではなく、なんと沖縄県那覇市にいることを報じていた。記事では、自民党の総裁選に触れた松井知事が「『もう消化試合の状況になっている』と評した。那覇市で記者団に語った」と書かれていたのだ。

  7日午後9時現在、府内では停電が続く世帯がまだ5万6000軒以上もあり、関空の機能も完全には戻っておらず、じわじわと関西経済や私たちの生活にも影響が出始めている。大阪府では8日昼までは大雨による土砂災害への警報も出ているのだ。それなのに大阪府の最高責任者が大阪を留守にし、沖縄に飛んでいるとすれば、これは知事として職務放棄にも等しい行為ではないのか。 

  なぜ那覇なのか。わが目を疑った私は、念のため取材先の国会議員や府議、また府政記者に確認を取ったが、誰も「知らない」「沖縄? まさか」と口をそろえ、中には絶句した議員までいた。私も当初、産経の記事は誤報ではないのかとさえ思ったほどである。だが、事実だった。松井知事は7日の午後、那覇市にいたのである。

  9月30日投開票の沖縄県知事選挙に立候補する予定の佐喜真淳氏(54)陣営の関係者に確認したところ、松井知事は佐喜真氏の事務所「沖縄県の未来をひらく県民の会」を訪れ、午後2時から日本維新の会の推薦状を手渡していたのだ。

  松井知事は大阪府知事と日本維新の会代表の2つの顔を持つ。理屈の上では、府知事の公務が終われば維新の代表としての政務に励むのは自由である。この日も維新の代表として那覇市に行ったのだろう。

  しかし、だ。府内には台風被害の爪あとがまだまだ残っているこの時期に、いくらなんでも大阪府知事より維新代表の仕事を優先していいわけがない。維新の府議、市議だって住民のために奔走している。推薦状を手渡すなら馬場伸幸幹事長が代行できたはずだ。政治家として目を向けなければならないのは沖縄知事選ではなく、今は府民の安全と生活を守ることだろう。松井知事はいったい、どこを見て仕事をしているのだろうか。

  また松井知事は6日、関空の機能がマヒしたことで、大阪国際空港(伊丹空港)と神戸空港を関空の受け入れ先にしたいと政府に要望した。だが、過去の言動を振り返ればこれは奇妙でしかない。

  そもそも橋下徹前府知事は2008年、伊丹空港の廃止を訴え、2010年4月に大阪維新の会が立ち上がってからも同会は伊丹空港廃止をぶち上げていた。その後、民主党政権の下で伊丹と関空は経営統合されたが、その原因は維新が伊丹廃止を訴えたからだけではない。むしろ政府や官僚らの思惑が大きく働いたからで、維新の本音はあくまでも伊丹の廃止だったはずだ。それが困ったときだけ伊丹空港に頼るというのは、ご都合主義もはなはだしい。

  9日からは大阪を離れ、万博誘致活動のため欧州を訪れる松井知事。大阪府民の安全よりも選挙とイベントにしか関心のない人物が、果たして大阪府のトップにふさわしいのかどうか。府民もいい加減、このデタラメぶりに気がつかないと、いずれ大阪は関空のように機能不全に陥ってしまうだろう。
 
 

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