日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
府警現場は疲労…幹部が頭下げれば
-大阪北部地震 富田林逃走 台風‐
6月の大阪北部地震のとき、このコラムに大災害の被災地にはたいてい取材に行っているが、まさか豊中市のわが家が被災地になるとは思っていなかったと書いた。その大阪が今度は台風21号で、私が知る限り、これまでにない大きな被害。そんな恐怖も覚めやらぬまま、北海道で震度7の大地震が起きた。つくづく私たちは災害列島のなかにいることを思い知らされる。
台風被害で何より困ったのは長時間の停電。台風が駆け抜けた翌日夜、東京から戻るとわが家の一帯は真っ暗。作動しなくなった信号機の下で5人ほどの警察官が赤色灯をかざして懸命に車を誘導。近くに止めた車には交代要員の警官の姿が見えるが、どの顔も疲弊しきっているように見える。
決して私の気のせいではない。新聞、テレビの記者に聞くと、大阪府警の一線の警察官の疲労と緊張は、ほぼ限界にきているという。西日本豪雨禍の応援派遣がまだ続いていた8月12日、富田林署の留置場から強制性交罪などで勾留中の樋田淳也容疑者(30)が逃走。行方がわからないまま、この台風被害となった。
その樋田容疑者が逃げ出して、あすでまる1カ月。この間、府警は全警察官2万4000人のうち連日3000人、これまで延べ10万人の一線警察官を動員している。だけど、私が不可解でならないのは、これまでただの1度も府警幹部から府民に向けた説明と協力要請がないことだ。
逃走翌日に実家付近に現れた、兵庫県尼崎市の知人の自転車に置き手紙をした─。そんな情報を小出しにしていれば、メディアは飛びついてくると思っているかもしれないが、それもせいぜい1カ月。報道量は日増しに減っていく。
ここは幹部が打ちそろってカメラの前でおわびするとともに、空き倉庫やガレージをお持ちの方は、ぜひ見に行ってほしい、コンビニやスーパーなどは、毎日、防犯カメラの映像をチェックして情報を寄せてもらいたい、といった協力を求めるべきではないか。
自らの失態は自ら解決するという幹部の意地はわからなくはない。だが、ことここに至って880万大阪府民、2100万近畿圏のみなさんの目と耳をぜひ貸してほしいと頭を下げるのは、決して恥ずかしいことではないと思うのだ。
(2018年9月11日掲載)
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