日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
殺人事件の半数超が親族間
‐ 治安の良い日本だけど… ‐
少し和らいだとはいえ、猛暑、極暑の夏。先週はテレビニュースも「暑っつ~い」一色。そんなとき私がコメントすることが多い事件の方も、被害者にはお気の毒だが、なんだか肌にべたつくような不可解、やりきれないものが多い。
茨城県取手市で母親(63)と銀行員の息子(36)が、息子の妻の遺体を一緒になって自宅の敷地に埋めたとして逮捕された。同じく茨城・かすみがうら市では、アパートのクローゼットに33歳の夫の遺体をコンクリート詰めにして放置した44歳の妻が逮捕された。
三重県鈴鹿市では25歳の男性が車の中で殺害されていた事件で、45歳のスナック経営の妻と交際相手の29歳の男が逮捕された。いずれも逮捕容疑は死体遺棄だが、殺人容疑に切り替わるのは間違いない。
こうした事件を報道しながら私は「54・3% 」という数字を出させてもらった。警察庁が先日、2018年版警察白書を公表。昨年認知された刑法犯は91万5111件で、戦後初めて100万件を下回った前年より、さらに減っていることが明らかになった。殺人のような凶悪犯も減り続け、1億2000万人を超える国で殺人事件の被害者は一貫して300人台。世界各国から見たら信じられない治安のよさとなっている。
なのに、この数字には「だけど」が付くのだ。
昨年度の速報値は出ていないが、2016年でみると、殺人事件のじつに54・3%が夫婦、親子、兄弟といった親族間なのだ。これは一昨年に限らず、ここ十数年、常に親族殺が殺人事件の半数を占めている。
なぜなのか。司法関係者も犯罪学者も頭を抱えるところだが、ひとつには「血は水よりも濃し」。他国に比べて家族親族の結びつきがより熱く、強い。だけどそれがひとたびこじれると、すさまじい憎悪嫌悪となって事件に発展するのではないかといわれている。
それにしても愛し合い、抱きしめ合い、支え合うはずの夫婦、親子、兄弟が殺人の半数を占めるとは…。
折しも下重暁子さんの著書、「家族という病」「夫婦という他人」がベストセラーになっているとか。家族、夫婦を少しばかりクールダウンしてながめてみる。それも暑っつ~い夏の、ひとつのすごし方という気もしてくるのだが─。
(2018年7月31日掲載)
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