日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
五輪ホスト国がこれでいいのか
‐バスケ日本代表買春行為‐
新聞、テレビ、雑誌からコメントを求められるのも大事な仕事である。ただ、たいていは国内で起きた事件、事故、災害についてだが、それが「いまジャカルタにいるんです。この件で、ぜひとも大谷さんの考えを聞きたくて」と電話がかかって、ちょっとびっくり。
中日新聞のバンコク特派員で、いまアジア大会の応援にきているという。「水泳やバドミントン、日本のメダルラッシュに水を差すわけではないのですが、あのバスケットの買春4選手の問題、日本国内はともかく現地インドネシアに対して、あの対応でいいのか、気になるのです」
バスケットボール日本代表の4選手が試合後、ジャカルタの歓楽街、ブロックMに出かけ、現地の女性を相手に買春行為をしたとして、日本選手団の認定を取り消され、翌日、帰国した不祥事。
「あそこは警察も知っているそういうエリアです。ただ、そうであっても、ジャカルタ特別州条例で買春行為は禁錮刑または罰金となっています。日本代表にあるまじき行為だ、即刻帰国、でいいのでしょうか」
記者の声を聞きながら事態発覚後の関係者の言葉を思い起こしていた。「公式ウエアで出かけて選手団行動規範に外れた行為」で「日本国民の期待を裏切った」(山下選手団団長)「日の丸を胸にした選手の行動ではない」(三屋裕子日本バスケットボール協会会長)
そこには、インドネシアもジャカルタも出てこない。たしかにアジアに限らず、中南米など発展途上国では、そうしたことで生きていく女性がいる。だが、国民の86%が戒律厳しいイスラム教徒というインドネシアでは、それを悲しい光景と受け止めている人が大半だ。
記者は、警察が捜査するかはともかくとして、ジャカルタの法規を犯したことを申し出たあとで帰国させるべきだったのではないかという。
すっかり長くなった電話。私は、まず大会を心待ちにしていた2億6000万インドネシア国民と、OCA(アジア・オリンピック評議会)に心からおわびするべきだったのではないか、とコメントさせもらった。
「日本代表」「日の丸を背負って」の報道ばかりが目につくなか、「2年後、東京五輪のホスト国になる日本がこれでいいのかと思いまして」という記者の声が、いまも耳に残っている。
(2018年8月28日掲載)
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