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2018年7月19日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

もう1つの警察の顔に憤りと落胆
再審開始地裁決定
‐酒店経営女性殺害 供述も証拠もでっちあげ‐

  いまも行方不明者の捜索が続く西日本豪雨災害。自衛隊、消防とともに懸命の活動をしている警察官の姿が目に飛び込んでくる。警視庁、大阪府警、栃木、香川、宮城…、ライトブルーにイエローの活動服。ヘルメットの脇から汗がしたたり落ちる。連日、そんな災害報道を続けるABCテレビ(大阪)の夕方の番組、「キャスト」で憤りに落胆、もう1つの警察の顔を見ることになってしまった。

  1984年滋賀県日野町で酒店経営の女性(当時69)が殺害され、金庫が奪われた事件で無期懲役が確定、すでに死亡している阪原弘さんの遺族が申し立てた再審請求について、大津地裁は再審開始を決定した。

  10年前の2008年、私はテレビ朝日の「サンデープロジェクト」(当時)で阪原さんのご家族や現場を取材。「100%冤罪」と報道させてもらったのだが、その後、私自身、何のお力にもなれないまま阪原さんは3年後、「悔しい」の言葉を残して亡くなられた。

  大津地裁の決定は、これまでの警察、検察の捜査、主張を木っ端微塵、まさしく粉砕するものだった。

  任意段階での自白について、阪原さんは取調べ官に顏が変形するほど殴られたうえ、「娘の嫁ぎ先をガタガタにしてやる」と脅され、「娘のために俺はどうなってもいい」と泣いていた。それに自供では「背後から襲った」となっているが、法医学者は「凶行時、被害者はあおむけだった」。さらに金庫が見つかった山林に阪原さんを同行させた引き当て捜査で、「捜査員を案内して投棄現場に向かう被告」として提出された写真は、じつは阪原さんが帰り道、捜査員の前を歩いていた捏造証拠だったことが明らかになった─。

  再審開始決定の根拠となった新たな証拠。裁判所の強い命令で検察、警察が渋々出してきた証拠は無期懲役確定までに出されたものの実に10倍に上るという。

 再審開始決定の翌日、炎天下にご遺族が向かったのは阪原さんのお墓だった。ご存命中に「事件の供述も証拠も、みんなデッチ上げでした」と告白する勇気ある警察官はいなかったのか。

  同じ炎天下、一刻も早くご家族のもとに、と被災地で流れ出る汗をぬぐおうともしない警察官の姿に、詮ないこととはいえ、ふとそんなことを思ってしまう。

(2018年7月17日掲載)

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