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2018年5月17日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

スピード解決導いた地道な行動確認
‐新潟小2女児殺害‐

  奈良、広島、栃木、秋田…、登下校中の女の子が殺害された事件は何件も取材してきたが、怒りで足が震えた現場は初めてだ。新潟市西区の小学2年、大桃珠生さん(7)が殺害されたうえ、線路に遺棄された事件は14日急転、新潟県警は近所に住む23歳の会社員を死体遺棄容疑などで逮捕した。

  悲しみの底にいる珠生さんの家族、級友、先生に、新潟県警は事件後1週間というスピード解決で報いてくれた。

  新潟県警が逮捕にこぎ着けた最大の背景は、白い不審な車でもサングラスの男でもなかった。地道に丹念に珠生さんの足取りを追ったことと、徹底した不審者に対する24時間行動確認だった。

  午後3時すぎに学校を出た珠生さんは友だちと別れて3時15分ごろ、幹線道路から人通りの少ない線路脇の道に入っている。自宅まで約400㍍。その間、約200㍍の所で、たとえば、近所のおばさんがピンクの傘を差す珠生さんとすれ違っていた。だけど、そこから自宅までの間は珠生さんと会った人はいない。となれば珠生さんは、この直後に事件に遭ったと推測される。この近所に住む男が容疑者だったとしても、不自然な点は全くなかったのだ。傘も靴も落ちていないことから、強引というより言葉巧みに誘い込まれた可能性が高い。

  その後、珠生さんが人目にふれるのは、変わり果てた遺体となったJR越後線上だ。だが電車にひかれた午後10時29分という時間も重要な手がかりだった。このころ現場周辺では、学校関係者や警察官が「珠生ちゃーん」と叫んで必死の捜索を続けていた。終電まで1時間もあるのに、その時刻、遺体を抱えて線路に近づけば見つかる危険性が高い。だけど犯人は遺体と一緒にいるわけにはいかなかった。この時間には帰宅する家族がいたのではないか。その時間が迫り、ランドセル、靴も一緒に遺棄したのではないか。

  これらのことを見ていくと、白い不審車やサングラスの男といったメディア情報に一切惑わされてこなかった新潟県警の捜査方針が見事に結実したと私は見ている。

  いずれにしても、数年に1度は登下校中の女児が毒牙にかかる。私たちはこんな社会と何とか決別できないものだろうか。

(2018年5月15日掲載)

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