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2018年3月

2018年3月29日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

尻まくる議員は目を合わせられるか
‐佐川氏喚問と「ヤカンを持った男の子」‐

 きょう27日、森友問題で当時財務省理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が衆参両院で行なわれる。なぜ、そしてだれのために国会でうそをつき続けたのか。午前午後計4時間、私はテレビ局のスタジオで生中継を見続けることになる。それにしてもここ数カ月、いまの政権の醜態に何度コメントしたことか。たいがいうんざりしているのに、またぞろだ。

 その安倍政権に醜聞をまき散らされて文科事務次官の座を追われた前川喜平さんが名古屋市の中学校で親子らに講演したことを聞きつけた自民党議員が、文科省の係長を使って市教委をネチネチグチグチと質問攻め。もちろん、影の薄い議員の政権へのお追従、おべんちゃらに決まっている。

  とはいえ、ことは国有地のたたきき売りではない、教育への公権力の介入だ。市教委は録音テープの提出を拒否したうえで、メディアに質問と回答の全文を公開、森友加計に次ぐ大問題に発展した。まさに教育現場が意地を見せてくれたのだ。

 そんななか先週、日経新聞の朝刊コラム「春秋」が心温まる話題を届けてくれた。こちらは市教委ではなく、熊本県教委。発生から2年となる熊本地震を前に、県教委が小・中学生向け副読本「つなぐ」を作成した。

  「大きな揺れが来たとき、私を守るように覆いかぶさったお母さん」「壊れそうな家の中からランドセルを見つけ出してくれたお父さん」など、あのとき子どもたちの心に残ったことを先生方が集めた労作。そこには当時、春秋欄が報じた「ヤカンを持った男の子」も紹介されている。

 自分も被災しながら、避難所で仮設トイレを使うお年寄りに手を洗ってもらうため、ヤカンで水をかけ続けた少年。県教委の担当者は、この少年を探し出して、さらに取材している。春秋欄はコラムの最後を「熊本の子どもたちが、よりたくましく、よりやさしく育っていくことを願ってやまない」と結んでいる。

 春とはいえ花冷えのする日もある避難所のトイレの前に、ヤカンを持って立ち続けた少年。きょう証言台に立つ佐川前理財局長。そして非難されて逃げまわるか、机をたたいて尻をまくるしかない議員は、少年に、そしてこんな先生たちに、しっかりと目を合わすことができるのだろうか。

(2018年3月27日掲載)

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2018年3月22日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

父の口から事件真相を…松本死刑囚三女の思い
‐ 地下鉄サリン事件今日23年 ‐


 きょう3月20日は死者13人、負傷者6300人を出した地下鉄サリン事件から23年である。今年は過去にくらべて、このオウム真理教事件で死刑が確定した13人を取り巻く状況は大きく変わっている。

 1月に一連の事件の裁判がすべて終結。さらに先週、東京拘置所で拘置中の13人の死刑囚のうち7人が大阪や名古屋、福岡など死刑執行施設のある5カ所の拘置所に移送され、いよいよ執行が近いことをうかがわせる。

 そんな中、テレビ朝日の「スーパーJチャンネル」(月~金・午後4時50分~)が麻原彰晃、本名・松本智津夫死刑囚(63)の三女、アーチャリーこと松本麗華さん(34)をインタビュー。私も近づく刑執行への思いを語らせてもらった。

 2月、この日も東京拘置所に父を訪ねる麗華さん。だが刑務官の「出てこない」のひと言で数分で戻ってきた。松本死刑囚は長期拘留による拘禁性精神疾患と診断されたが、東京高裁は刑事能力ありとして死刑判決。いまも病気を装う詐病だとする説がある一方で、半年から1年の治療で人間性を取り戻せると主張する精神医学者も数多くいる。

 麗華さんも、「なぜあのような凄惨な事件を起こしてしまったのか、父の口から話してほしい」と訴える。私もまた、事件の本質は松本死刑囚が語らない限りわからないと思う一方で、事件から23年、だれひとりとして罪を償っていないことは法治国家として許されないという思いもある。

 松本死刑囚に溺愛されたという麗華さんは最後に被害者への思いを聞かれ、長い沈黙のあと、「不条理な死を強いられた方に、いったい何が言えるのでしょうか」と声を絞り出した。

 社会の悪、世の不条理との最終戦争を意味するハルマゲドンに向けて暴走したオウムの若者たち。失われた命に、命で償う日が近づいている。ただ、あの日から四半世紀、いま政権を覆う腐敗腐臭。その腐敗によって自ら命を絶つ不条理を強いられた財務省の下積み役人たち。その死に心痛めるどころか、歯牙にもかけない様子の宰相夫妻。部下に責任をなすりつけ、なお悪しざまにののしる財務大臣。

 自らの不条理を覆いかぶせ、国民の目をそらさせる。得意なその手法のための死刑執行だとしたら、決して許されるものではない。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2018年3月20日掲載)

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 これまでホームページで日刊スポーツ『フラッシュアップ』やWebコラムなどを発信してきましたが、新たに大谷昭宏事務所のブログがスタートします。

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 なお、2018年4月より当事務所ホームページの更新は止まり、ドメイン「otani-office.com」 も当ブログに移行いたします。ブログからリンクを通じてホームページの過去記事等の閲覧は可能です。

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