日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
尻まくる議員は目を合わせられるか
‐佐川氏喚問と「ヤカンを持った男の子」‐
きょう27日、森友問題で当時財務省理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が衆参両院で行なわれる。なぜ、そしてだれのために国会でうそをつき続けたのか。午前午後計4時間、私はテレビ局のスタジオで生中継を見続けることになる。それにしてもここ数カ月、いまの政権の醜態に何度コメントしたことか。たいがいうんざりしているのに、またぞろだ。
その安倍政権に醜聞をまき散らされて文科事務次官の座を追われた前川喜平さんが名古屋市の中学校で親子らに講演したことを聞きつけた自民党議員が、文科省の係長を使って市教委をネチネチグチグチと質問攻め。もちろん、影の薄い議員の政権へのお追従、おべんちゃらに決まっている。
とはいえ、ことは国有地のたたきき売りではない、教育への公権力の介入だ。市教委は録音テープの提出を拒否したうえで、メディアに質問と回答の全文を公開、森友加計に次ぐ大問題に発展した。まさに教育現場が意地を見せてくれたのだ。
そんななか先週、日経新聞の朝刊コラム「春秋」が心温まる話題を届けてくれた。こちらは市教委ではなく、熊本県教委。発生から2年となる熊本地震を前に、県教委が小・中学生向け副読本「つなぐ」を作成した。
「大きな揺れが来たとき、私を守るように覆いかぶさったお母さん」「壊れそうな家の中からランドセルを見つけ出してくれたお父さん」など、あのとき子どもたちの心に残ったことを先生方が集めた労作。そこには当時、春秋欄が報じた「ヤカンを持った男の子」も紹介されている。
自分も被災しながら、避難所で仮設トイレを使うお年寄りに手を洗ってもらうため、ヤカンで水をかけ続けた少年。県教委の担当者は、この少年を探し出して、さらに取材している。春秋欄はコラムの最後を「熊本の子どもたちが、よりたくましく、よりやさしく育っていくことを願ってやまない」と結んでいる。
春とはいえ花冷えのする日もある避難所のトイレの前に、ヤカンを持って立ち続けた少年。きょう証言台に立つ佐川前理財局長。そして非難されて逃げまわるか、机をたたいて尻をまくるしかない議員は、少年に、そしてこんな先生たちに、しっかりと目を合わすことができるのだろうか。
(2018年3月27日掲載)
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